今しか見えない/2022年10月

駒沢 今、そこにあるヒント

今しか見えない

エリザベス女王の国葬と安倍元総理の国葬。二つの国葬には
大きな違いがありました。そう、「マスク」です。
イギリスではマスクをつけている人は皆無、日本ではほぼ
全員がマスクをつけている。
昨年東京オリンピックの閉会式で、次の開催都市であるパリ
からの中継でもほぼノーマスクでした。
これに対してある方は、日本は同調圧力が強いから、永遠に
ノーマスクにはならないでしょう。というコメントをして
それに一定の理解を示す人も多数。
実はこれって、現状維持バイアスそのもの。「今」しか見えて
いない証拠。街を歩いている人を見ていると顎マスクや
腕にマスクを巻いているノーマスクの人も増えてきています。
という、現実を見ると永遠にノーマスクにならないと考える
ことはおかしいことがわかります。
円安も同じ。今年の3月から一気に進んだ円安。半年経ちましたが
収まる気配はない。そこで出てくるのが永遠に円安説。
これも「今」しか見えていない、現状維持バイアス。
未来のことは誰にもわかりません。言えることは今の状態が
永遠に続くことはない。ということ。つまり現状維持バイアスに
とらわれずに、未来の出来事を予測させる動きを敏感に察知し、
素早く対応できる準備をしておくこと。
アフターコロナに向かって、ビジネスのあり方を変えていかなきゃ。

 

「にんじん」
1894年  ジュール・ルナール 著
2014年 高野優 訳 新潮文庫帯に「実の母親によるいじめにも負けず、成長する赤毛の少年」という訳者のコピー。
読み進めていくと、始まりはなかなかのいじめで辛くなって
来るのですが、だんだん違和感が。これはいじめでもなんでもなく
少年のから思春期に向かう中での、妄想と願望がないまぜになって
葛藤しながら成長していく物語なのではないかと。
裕福な家庭でのちょっと変わった少年。両親からも兄弟からも
愛されている描写もしばしば。
違和感を持って読み進め、訳者あとがきを読んで納得。
これは文章を表面的にしか捉えることができない訳者が、
「母親のいじめ」だと勝手に思い込んでいるのだと。
翻訳本は訳者によって随分と違い、下手な訳者に当たると
小説が台無しになるのですが、この訳者は違う意味でひどい。
原作を自分の主義主張に捻じ曲げてきている。
訳者はモラハラの本も訳している。そんな思考でにんじんの
翻訳をしていくとこうなるのかもしれません。
これも一つのバイアスですよね。

失敗は成功のためのデータ収集

先週、若田光一さんが国際宇宙ステーションに飛び立ちました。
今回は5回目の宇宙、そして半年間の滞在。
若田光一さん、1963年8月生まれ。私とほとんど変わらない!
信じられません。頑張れ光一!

今回使用したロケットは、スペースXのファルコン9。
そのファルコンX。今までどのくらい失敗してきたのか。
それでよく有人機を搭載できるな!

ではなく、それだけの失敗があるから今がある。
エンジンの燃焼実験でいくつものエンジンを爆発させ、
燃料実験の失敗や着陸の失敗でどれだけ機体をダメにしたのか。
その全ての失敗からデータを取って分析、解析することで
確実性を増していく。
今まで失敗したことがないロケットって、想像するだけで
怖いですよね。いつ、何が原因で失敗(爆発)するかわからない。

そう、失敗は成功のためのデータをとるためのもの。

今年もあと80日。これからの成功のために、どんな失敗をして
どんなデータが取れたのか。棚卸ししてみることにします。

「人形の家」
1879年  ヘンリック・イプセン 著
1953年  矢崎源九郎 訳 新潮文庫

1879年の上演された戯曲。
戯曲にも馴染んできました。舞台のセット、照明、俳優の仕草
を想像して読むとなんとも心地良い。
言葉で書かれた小説、戯曲は究極のメタバースなのです。
その世界に没頭できるし、なんなら自分が登場人物の一人に
なって参加することもできる。

主人公ノラの態度、セリフ、そして意思の変化の中で、
自分はどの立ち位置なのか。想像が膨らみます。
そして、それは今の時代に置き換えるとどうなのか。

やっぱり、1980年代後半から1900年前半は興味深すぎます

自分を客観的にみる

仕事のほとんどがオンラインになって、自分の顔を見る時間が
圧倒的に増えました。毎日毎日自分の顔を見ながら仕事を
するなんて!と、それは悪くないことなのですが、オンラインで
見ているのは正面の顔だけ。
後ろから、横から、そして全身を見ることは少ないし、
その姿を誰かからフィードバックされる(指摘を受ける)こと
など、ほとんどありません。

自分を客観的に見るってことはとても難しい。
見た目でさえそうですから、自分の思考や思考の癖を
鏡に照らしてみることはとても困難なことですよね。

自分を客観的にみるためには、他者の目を使うしかないのでは
ないかと思います。きちんとフィードバックを受ける。そのために
信頼できる良好な関係を作っておくこと。これが大事。

時々、良かれと思って指摘をするとそれから関係が悪化して
しまうってこともあるからそれもまた難しい。
信頼関係って、本音で言い合える関係でもないし、遠慮する関係
でもない。近すぎずもちろん遠くなく、いい感じの距離感が必要
だったり、会話のレベル感も。

そういう人たちとお互いを尊重しながら、遠慮せずに言いたい
ことを伝えて、いい仕事を作り上げていくって最高なんですよね。
「自分を客観的に見る」とは、実際に見るのではなく、そのような
関係の中で、冷静に自分を見ようという意識なのかもしれませんね

【今週の1冊】

「鹿鳴館」
1956年  三島由紀夫 著

今週も戯曲。戯曲の面白さがわかってきました。
登場人物のセルフと舞台セット、状況説明だけでその映像が
頭の中に描き出される。これってやはり究極のメタバース。

それにしても三島由紀夫の文章はとても洗練されていて
無駄がなく、それでいて満たされている。以前も書きましたが、
一生かかっても、三島のような文章は一行も書けないだろう
という圧倒的な力。

もっと長生きして、多くの作品を残して欲しかった。

変化の時代に生き残るのは・・

急激な円安と物価高。そして国際情勢の慌ただしい変化。
こんな時によく耳にするフレーズがこれ。
「生き残るのは強いものでも賢いものでもなく変化できるもの」
そうだ!変化しなきゃ。変化すれば生き残れる!
と思っていても、生き残れるか保証なんてありません。

生き残るかどうかは、実は結果でしかないのです。
キリンの首はどうして長いのか、象の鼻は、、、。
変化したから生き残ったのではなく、長くなったからたまたま
生き残ったに過ぎないのです。今、実存する生き物は変化したから
ではなく、変化の結果がたまたま新しい環境に合致していただけ。

ということで、お勧めしたいのは、
今を楽しく本当に自分がやりたいことをやろうじゃないか!

生き残るために変化するのではなく、楽しむために変化する。
だって、変化しないと面白くないじゃないですか。
前例主義、今まで通りやってみる、のではなく、
新しいことをやってみて、未知の反応を確かめる。
考えただけでもワクワク、ゾクゾクしてきます。

生き残れたかどうかを判断するのは、遠い未来の人。
だから今を楽しみましょ。

【今週の1本】
・・・本、読めませんでした。

「ウォール・ストリート」
1987年  監督:オリバーストーン
主演:マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン

何度見ても色褪せない映画です。
なんだろう、この時代の熱狂、人が持つエネルギー、お金の魔力
わかっていても引き込まれる面白さ。
人はなんのために働いているのか、働いて得られる幸せって
なんだろう。資本市場の仕組みと人間の欲。
一度この世界に足を踏み込んだら、抜け出せないだろうということ
ひしひしと伝わってくる演出。
大きな時代の流れには誰も抗えないのですね。

違和感の正体

先週、珍しく体調不良でした。体調不良いつぶりだろう?
コロナ禍でワクチンの副反応で1日寝込んだことを別にすれば
5年ぶりくらいかもしれません。体調不良の原因は腹痛。その腹痛の原因は胃腸炎。その胃腸炎の原因は
多分ストレス、、、。精神的なことは体に現れるんですよね。思い返せば、腹痛の前になんとなくちょっと体に違和感を感じていました。
何か普段と違うなと。それがサインだったのですね。
その時にストレスを解消する行動をとっていれば腹痛を引き起こすことは
なかったのかもしれません。いつもは何も感じていことが気になってしまう。
体の部位のことなんて考えもしないのに感じてしまう。
これって、そこに何か異常がある兆候ですよね。
で、大事なことはそれに敏感に敏感になれるか、そして判断できるか。
その違和感の正体を見極めて向き合うか、回避するか。今回のストレスは、向き合って乗り越えることで新しい可能性を
見つけてくれました。このチャレンジが大きな成果を生むような
気がしてワクワクします。

違和感は、変化と成長のきっかけなのですね。

【今週の1冊】

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」
1968年  フィリップ・K・ディック 著
1977年 浅倉久志 訳  ハヤカワ文庫

映画、ブレードランナーの原作。
小説を先に読み、これが映画化されたらどうなるのかなと
興味と期待を裏切らないで欲しいと思って映画を見ると
原作とは別の世界観があって二度楽しめることは今まで
何度もありますが、映画を観た後で原作を読む時の不安な気持ち。
それを見事に払拭してくれました。

映画のブレードランナーは1982年!もう40年前・・・・。
それにも驚きますが、だからSFは面白いのですよね。
技術の進歩の先がそこにあり、今の社会の矛盾が拡大した世界が
描かれる。

人間型の形とAIの頭脳がアンドロイドになった未来はどうなるのか。
そんなことを考えるのも悪くない。
未来はアンドロイド(ロボット)が人間を支配するのか。
ということを考えていたらこんな話を目にしました。

ロボットの躯体=機械の寿命は10年。20年メンテナンスしない
故障しないハードはない。
ソフトウエアも10たったら使い物にならない。
それを修理し、開発するのは人間。
なので、人間無しに知的ロボットは存在しないのだと。
確かにそうかもしれませんが、それがわからないから未来は面白い

SFは好奇心を掻き立てられますね。

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